新型コロナウイルスの蔓延で、長引く外出自粛に、臨時休校。先が見えない中、ストレスや不安で心身が疲れている方も多いと思います。また、在宅勤務、自宅待機等で運動不足になり、いつも以上にPCやスマホによって「目」を酷使する場面が増えている方も多いでしょう。
テレビでも、自宅でできる東洋医学的ヘルスケアについて取り上げられることが多くなりました。 そこで、私なりに皆様に実践していただける方法についてまとめてみました。
鍼やおきゅう、指で刺激することで体の痛みや不調を和らげるとされる「ツボ」は、WHOでも361か所を認定しており、体の痛みだけでなくメンタル面にも効果が期待できると言われています。
免疫力は、外から侵入した外敵を監視して撃退する身体の抵抗力や回復力のことです。
病原体は、目、鼻、耳、口などから気道や食道などを通過し、体内に入っていきます。体を病原体から守ってくれる免疫細胞は、その各所に存在し、ブロック機能が働き、守られています。
東洋医学では、免疫力は「正気(せいき)」の強さが深く関連していると考えられています。正気とは、病気や不調に対する防衛能力や、気候の変化に対する調整能力などを担う生命エネルギーのことで、不足していると、以下のような症状が多く見られます。
上の項目に該当するものが多いほど、正気が不足し免疫力が低下している可能性が考えられます。
同じ環境にいても、カゼなどの感染症にかかる人とかからない人がいます。この違いは免疫力の違いです。免疫は、体内に入ってきた細菌やウイルスなどの異物や、体内で発生したがん細胞などをやっつける体の防衛機能で、これによって様々な病気から身を守ることができます。
体温が上がると、体の機能が活性化され、免疫力も上がります。
「風邪を引いたらぜったいお風呂に入らない」とおっしゃる患者さんもいらっしゃいますが、私はひどく衰弱している患者さん以外は、身体を温め、発汗を促す鍼灸治療をさせていただくことがあります。そうすることで、解熱する過程で微熱が長く続くのを防ぎ、早く完治できると考えるからです。
呼吸すると筋肉が動き、筋肉が動くと体温が上がります。男性は腹式呼吸、女性は胸式呼吸が多いですが、腹式呼吸は最も大きな筋肉「横隔膜」が動くため、高い発熱効果が期待できます。
深呼吸は腹式なので、女性は1日数回、深呼吸することを心がけます。 呼吸が浅くなっていると感じた時は、深呼吸しましょう。おへその下を意識しながら大きく息を吸い込んだら数秒止め、しっかりとおなかが膨らんでいるのを感じてからシューッと吐き、3回くり返します。
@爪もみ、ツボ刺激で静脈の流れをよくする。
爪のはえぎわの両角には、神経線維が密集する「井穴(せいけつ)」というツボがあり、東洋医学ではこのツボが自律神経を調節するポイントと考えられています。
私は熱が出たとき、少し痛いですが井穴に鍼をし、解熱させています。
爪もみで井穴を刺激すると、自律神経に伝わり、バランスが整います。それによって免疫力が高まり、血液の流れもよくなります。
指先には毛細血管が密集しており、爪もみの刺激はこれらの血管の血流を促すポンプのような役目も果たします。1日2〜3回を毎日続ければ、血行が良くなり不調改善に効果が期待できます。
「井穴」のツボは、爪のはえぎわから2mmほど指のつけ根側にありますが、その付近を押せばOKです。
手指の井穴のツボを反対側の手の親指と人差し指ではさみ、約10秒ギュっと押します。刺激の強さは、痛気持ちいいぐらいです。これを両手の指すべてに行います。
体の疲れをとるためには、良質な睡眠をとって自律神経を整えることが不可欠です。睡眠中は免疫細胞の働きが活発になり、免疫力も高まります。人は体温を下げながら入眠するので、布団に入る30分前に体温を上げると質のよい睡眠がとれます。 入浴すると体が温まり、コリが心地よくほぐれてリラックスすることで、副交感神経も働きます。
湯温が高いと交感神経が働いてしまうので、温度は42℃以下に設定します。シャワーだけでは体が温まらないので、湯船につかって体を温める入浴習慣をつけましょう。
免疫は、ストレスや不規則な生活、生活習慣の乱れなどがあると自律神経のバランスが崩れて低下しますので、健康を維持するために、日ごろから自律神経のバランスを崩さないようにすることが大切です。
最も脳に刺激が伝わりやすいツボ「合谷」は、いろいろな症状に効くため「万能ツボ」とも言われます。
合谷を刺激すると、肩や首のこり、眼精疲労、頭痛、頭重感、倦怠感、慢性疲労、不眠、歯の痛み、鼻づまり、花粉症、便秘、下痢などの症状に良い効果が期待できます。長時間パソコン操作をすることによる、手や指の疲労や痛みにも効果があります。また、メンタル面でも、ストレスや神経過敏、集中力がない、うつっぽい、気分の落ち込み、イライラ、やる気が起きないなどの症状がある時に合谷を刺激すると、症状が緩和されます。
ただし、合谷のツボ押しで歯の痛みがなくなったからといっても、歯医者さんに行かなくてもいいということにはなりません。虫歯や歯槽膿漏など、適切な治療も必要です。
合谷は、反対の手の親指の腹を人差指に向かって押します。合谷というツボは、大腸経というツボの配線図では、親指と人差指の間ではなく、人差指寄りにあるので、人差指が痛気持ちいいと感じる強さで押すと効果的です。
女性のための万能ツボとして知られる「三陰交」は、脚の内側のくるぶしから指幅4本分上、すねの骨と筋肉の間のあたりにあります。
脊髄を介して子宮や卵巣に刺激が伝わるとされており、生理痛の改善や更年期の症状、逆子の治療などに効果的です
イライラしているときや眠れないときには、リラックス効果が期待できるツボ「百会」を押すのがおすすめです。場所は、両耳を結ぶ線と、顔の中心の線が交差するところにあります。
口をぐっとかみしめたときにできる頬のふくらみの部分には、「頬車」というツボがあります。唾液腺の近くにあるため、細菌やウイルスから体を守ってくれる唾液の分泌を促すことができるそうです。
ひざを曲げたときに膝のお皿の外側にできるくぼんだところから指4本分下にある「足三里」は、足の疲れを癒し、膝の痛みを予防します。
胃腸の働きを整え、冷えを改善するなど、優れた効果のあるツボです。 古くは、奥の細道で有名な松尾芭蕉も「足三里」にお灸をすえて全国行脚していたそうです。
目に負担をかけ過ぎると、目の中の細胞や筋肉が疲れてしまいます。気付かないうちに、次のようなことで目に負担をかけてしまいます。
目を酷使している場合、まずは、目の休憩と規則正しい生活を心がけ、目をいたわりましょう。
食事と休養をしっかりとりましょう
長時間の作業をする場合は、1時間おきに10分程度目を休めるようにしましょう 疲れがたまったときは、蒸しタオルなどを当てて目を温めるとリラックスできます>
メガネやコンタクトレンズを使っている場合は、定期的に度が合っているかチェックしましょう。
睛明(せいめい):目頭の内側やや上方のくぼんだ部分。
目を閉じ、右手の親指と人差し指で、「睛明」をつまむようにします。ゆっくり円を描くように押しながら、ぎゅっと目を閉じます。 眼球(目玉)を避けながら、やや内側を上向けに押しても効果的です。これを1 分間ほど続けます。
風池(ふうち):後ろ髪生え際から上で、ぼんの窪(後ろ髪の生え際の真ん中の窪み)から親指2本分外側に行ったところ。
両手を組んで、両側の親指を両側の「風池」に当てて、体の上半身を椅子の背もたれへ倒し、頭の重さを使って、親指で押していきます。
風池は、風邪や頭痛にもよく効きます。
魚腰(ぎょよう):眉毛の真ん中あたり
攅竹(さんちく):眉頭のくぼんだ部分
太陽(たいよう):眉尻と目尻の中間地点から親指の横幅くらい外側のくぼんだ部分
両手で、「太陽(人差し指)」「魚腰(中指)」「攅竹(薬指)」を同時に押さえます。 1分間ほどやさしく圧迫します。人差し指をできるだけ垂直方向に押さえるのがポイントです。
肩井(けんせい):首を前に曲げたときに、でっぱる骨(A)と肩先(B)を結んだ線の真ん中。首と肩先の真ん中にあって、肩の筋肉の中心にあたり、反対の手の指を広げて肩に置いた時、ちょうど中指が当たる位置。身体の中心に向かって「肩井」を長く刺激します。人差し指か中指、または両方を使うと上手く刺激できます。人差し指・中指・薬指の3本をそろえて、左右交互に3秒×3回押します。
曲池(きょくち):肘(ひじ)の関節部分の上側。 肘を曲げた時にできる横じわの延長上にあります。親指で、左右交互に「曲池」を3秒間×3回押します。
曲池は、血圧を下げるのにも効果があるツボです。